八丈島の歩き方
11月の八丈島、漁師に教わった黄金カツオの炙り方

グルメ2026年5月24日

11月の八丈島、漁師に教わった黄金カツオの炙り方

通称「黄金カツオ」と呼ばれる秋のカツオのこと。漁師の山田さんに、いちばん美味い食べ方を聞いた。家でやるなら、と前置きされたコツが二つ。

僕

ホテル運営者・編集長 / 2026年5月24日

11月の八丈島は、たぶん日本で一番油断できる場所だと思う。台風シーズンが終わって、雨もまだ少なくて、空気だけ静かに乾いていく。そして、カツオが脂をのせる。

島では、秋のカツオを「黄金カツオ」と呼ぶ。背中の青ではなくて、断面が金色に近い色をしている、というのが名前の由来らしい。三根の港でセリのあとに出る個体を、宿の隣の魚屋〈山田水産〉で買えるのが、僕の一年の中でいちばんの楽しみだ。

炙る前に、塩を当てる

普段、漁師の山田さんは無口だ。たぶん僕より20歳くらい上で、毎朝4時から船に乗っている人なので、午後になると喋るカロリーがもう残っていない。それでも、カツオの話を振ると、急に早口になる。

「家でやるならな、まず塩を当てるんよ。30分くらい。脂が出てくるから、それを拭いてから炙る。これだけで全然違うで」

これが一つめ。塩は粗めのものを、両面にしっかり。冷蔵庫で30分、出てきた水分をキッチンペーパーで丁寧に拭く。そのあとで、皮目だけをガスの直火で炙る。中はほぼ生のまま。

もう一つは「氷水に落とすな」

家庭でやると、炙ったあと氷水に落として粗熱を取る、というレシピをよく見る。山田さんはこれを激しく嫌う。

「水に落としたら全部終わりや。せっかく塩振って水抜いたのに、また水入れてどうすんの」

言われてみればその通りだった。炙ったあとはまな板にそのまま置いて、自然に冷ます。粗熱が取れたら、繊維と垂直に厚めに切る。塩とすだち、それと島の麦焼酎〈八重椿〉のロックで食べる。これが、僕にとっての11月の八丈島だ。

東京から来た友人にこれを出すと、9割の確率で「これがカツオ?」と言われる。残りの1割は、たぶん本物のカツオを食べたことがなかった人だ。

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