八丈島の歩き方
フリージア祭りの裏側。八丈島の春は、35万本の球根からはじまる

文化と季節2026年5月5日

フリージア祭りの裏側。八丈島の春は、35万本の球根からはじまる

毎年3月、八丈富士の麓が黄色に染まる。誰が植えて、誰が抜くのか、ずっと気になっていた。会場の隣で15年農家をやっている方に話を聞いてきた。

僕

ホテル運営者・編集長 / 2026年5月5日

3月の終わり、八丈島の八形山の斜面が、いっせいに黄色になる。フリージアの花が、35万本咲く。「八丈島フリージア祭り」と呼ばれる、たぶん島で一番有名なイベントだ。

毎年、その様子を見るたびに思っていた。これ、誰が植えて、誰が抜いてるんだろう。35万本ですよ。ものすごい労力だ。

会場の隣で農業をしている人に話を聞いた

会場の脇に、ずっと農業をされているお宅がある。立て看板に「フリージア球根 直売」と書いてあったので、思い切って入ってみた。ご主人の田中さんは、もう70歳近いと思う。フリージア栽培をはじめて15年だそうだ。

「植えるのは10月。地元のおばちゃんたち、20人くらいで一週間かけて、35万球。これがな、なかなか大変なんよ」

球根は7cm間隔で、深さ5cm。一日中しゃがんで植える。20人で一週間、ということは延べ140人日。それを毎年やっている。

抜くのも、植えるのも、人海戦術

4月の中頃、祭りが終わると今度は球根を全部掘り起こす。「掘ったらすぐ陰干しせんと腐るで」とのこと。それも全部、地元のボランティアと農家のおじいちゃんおばあちゃんでやっている。

正直に書くと、ちょっと泣きそうになった。観光客の僕たちは、車を停めて10分だけ写真を撮って、「きれいやな」と言って帰る。その10分の景色を、地元の人が35万球で支えている。

来年の予定

田中さんに「来年も、また同じ場所で?」と聞いたら、ちょっと笑って「来年もやるけど、ボランティアの平均年齢が毎年上がってるんよ」と言った。一番若い人で60歳台、最高齢で82歳。

それでもやる。「八丈島の春はフリージアからはじまる、ってお客さん覚えてくれてるから」と。35万球の理由は、ここにあった。

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